5月の店頭本で読んでいる本買った本欲しい本

urotanken2007-05-25



店頭に並んでいたものをリストアップ。

■菊池伶司 版と言葉 The Etchings of Reiji Kikuchi,1946-1968
堀江敏幸柄澤齊・加藤清美=著
A5判並製カバー装、176頁、本体価格2,200円+税、ISBN978458270269-9

菊池伶司 版と言葉

菊池伶司 版と言葉

版画が最も熱かった60年代、一人の伝説的な作家がいた。わずか1年余りの制作期間の後、夭逝した菊池伶司である。その生涯と作品を完全収録。NHK新日曜美術館で特集番組放映予定(5月27日)。


22歳という短命の版画家菊池伶司の、読めない文字が付された銅版画やスケッチ、日記などがまとめられ、3人の著者が解説を付したもの。新日曜美術館も是非みたいところ。*1



■バン・マリーへの手紙
堀江敏幸=著
岩波書店、四六判上製カバー装・232頁、本体1,800円 + 税、ISBN9784000244367

バン・マリーへの手紙

バン・マリーへの手紙

「バン・マリ(ー)」(bain−marie)とはフランス語で「湯煎」のこと.直接火にかけないことで逆に奥深くまで火を通しうるこの調理法にならって,彼方に過ぎ去った淡い思い出や,浮いては沈む想念を,湯煎にかけるようにゆっくりと,細密かつやわらかな筆捌きでつづる最新エッセイ.フィクションとノンフィクションがにじみ合う,堀江文学のエッセンス.

岩波PR誌「図書」で連載されていたもの。いつも書店で貰っては拝読していたので既読だが、やはり買っておきたい。



■溶ける街透ける路
多和田葉子=著
日本経済新聞出版社、四六判上製カバー装・264頁、本体価格1,500円+税、ISBN9784532165956

溶ける街 透ける路

溶ける街 透ける路

異なる言語の交錯によって街の風景が溶けていき、異邦人のまなざしが路の下に隠れた地霊を呼び覚ます。日本文学を代表するコスモポリタン作家による、欧米51箇所を訪ねる寓話旅行に、あなたもご一緒しませんか?


ドゥルーズ・映画・フーコー [増補新版]
丹生谷貴志=著
青土社、四六判上製カバー装・320頁、本体2400 円、ISBN9784791763382

ドゥルーズ・映画・フーコー

ドゥルーズ・映画・フーコー

死へと向かう快活な闘い?自ら命を絶った〈生の哲学者〉ドゥルーズ。病への治療を拒否して逝った〈生=権力の考古学者〉フーコー。現代を代表する二人の哲学者の全思想を「世界は映画である」というテーゼの上で出会わせ、死と崩壊へ向かう生の過程を凝視する新しい哲学を提示する。〈崩壊以後〉の映画としてのイーストウッド論を増補。

これも既読だが、増補版も欲しいもの。それよりも月曜社から出るという『光の国〔新版〕』も期待してしまう。



■東京てくてくすたこら散歩
伊藤まさこ=著    
文藝春秋、定価1200 円、A5判並製カバー装、160頁、ISBN9784163691206

東京てくてくすたこら散歩

東京てくてくすたこら散歩

浅草ほおずき市に吉祥寺のギャラリー、玉堂美術館と御岳山ケーブルカー……知られざるとっておきの東京を紹介。カラー写真満載。伊藤さんは、その抜群のセンスの良さで大人気の雑貨&料理スタイリストです。この本の撮影取材がスタートしたのは2年前。吉祥寺、根津・谷中、二子玉川、浅草、築地、神楽坂、青梅……リネンや器店、美術館に骨董市、ひいては民家園や大学まで、70ヶ所以上もの場所に足を運んできました。可愛いもの、美味しいものに人一倍敏感な伊藤さんが紹介する「東京」とは? 散歩の収穫も必見。マップ付きで持ち歩きにも便利、美しい写真を見るだけでも胸が躍るオールカラーフォトガイドです!

軽めの町案内であまり期待できなさそうだが、実際はどうだろう。



■都市のイメージ 新装版
ケヴィン・リンチ=著
丹下健三・富田玲子=訳
岩波書店、A5判並製カバー装・281頁、本体3,600円 + 税、ISBN9784000241380

都市のイメージ 新装版

都市のイメージ 新装版

イメージアビリティ.この独自の概念を提唱する本書は,かつて都市デザインの世界に新風を吹き込んだ.以来およそ半世紀.著者ケヴィン・リンチの卓抜した眼差しは,いまなお清冽な光を放ち,示唆に富む.美しく,楽しい,喜びある都市の姿とは.待望の声久しい名著を,装い新たに再刊する.


■ツリーハウス?だれもが欲しかった木の上の家
ピーター・ネルソン=著、本郷恭子=著
ワールドフォトプレス、A5版変形・126頁、1,524円+税、ISBN 9784846524258

ツリーハウス―だれもが欲しかった木の上の家 (ワールド・ムック―Living spheres (425))

ツリーハウス―だれもが欲しかった木の上の家 (ワールド・ムック―Living spheres (425))

水木しげる大先生の御陰もあって、鬼太郎の家のような木の上に木で組み立てた家のなかで寝っ転がて景色を愉しむのは、今の今でも夢暮らしのひとつ。秘密基地というのはだから、自分の場合、鬼太郎の家にほかならなかった。木の上に家を建てるのは後のはなしとして、必要経費は土地代だけでなく、巨木代も含むのか。



■薔薇宇宙
塩崎敬子=著
人文書院、菊判変型並製・104頁・定価3990円(税込)、ISBN9784409100233

薔薇宇宙―塩崎敬子画集

薔薇宇宙―塩崎敬子画集

現代にこんなマニエリストの画家がいた!
薔薇を偏愛し、薔薇の画家として独自の静物画の世界を追求する塩崎敬子のほぼ全作品を収める。波、貝殻、蓮や蕗、布や紙など、世界の微妙な表層に注がれる曖昧さを許さぬ視覚と練達の手の動き、強靱かつ徹底したリアリズムが生み出すリアリズムを超えた時空!


マグリットを思わせる光景に美しい薔薇が浮上している、惚れ惚れと見入ってしまう薔薇たち。



■精霊の息吹く丘
モーリス・バレス=著
篠沢秀夫=訳
中央公論新社、四六版上製カバー装・345頁、ISBN9784120038297

精霊の息吹く丘

精霊の息吹く丘

ロレーヌ地方の廃墟に修道院を再興した三人兄弟の情熱と挫折の物語。人は血と土なくして存在しないとした文豪の知られざる秀作を初邦訳。


■哲学の歴史4  15−16世紀  ルネサンス−世界と人間の再発見−
責任編集=伊藤博
中央公論新社、752頁、新書判変型上製、定価3,360円、ISBN978-4-12-403521-6

哲学の歴史〈第4巻〉ルネサンス 15‐16世紀

哲学の歴史〈第4巻〉ルネサンス 15‐16世紀

万物照応 めくるめく思想の宇宙?プラトン哲学をはじめギリシア哲学を再発見し、それを咀嚼することで、西洋世界は新たな世界観と人間観を手にする。光と闇が交錯するルネサンス期のめくるめく思想を活写。


■20世紀
アルベール・ロビダ=著
朝比奈弘治=訳
朝日出版社、菊判528頁+カラー口絵20頁・並製、本体3,200円+税、ISBN 9784255003887

20世紀

20世紀

19世紀には、もうひとつのSF全盛期があった! ターゲットは20世紀、その中心地はフランス。まるでシャンソンのように小粋で、ほろ苦いフランスSFにあって、ジュール・ヴェルヌと覇を競った諷刺まんが家アルベール・ロビダの描く「なつかしの20世紀」に心ゆくまで酔いしれる! ……荒俣宏
ロビダは本物だ! 未来を一流のエスプリによって予言した知の開拓者。その魅力的な絵と文章を抱きしめて、私たちの輝く「これから」を取り戻そう! ……茂木 健一郎


帯文・荒俣宏NHKの人間大学か何かでやっているのをみて知ったのがロビダだった。茂木健一郎の文は…(いるか?)。朝日出版社の分厚く重い、並製の立派な本造りは「ロビダ自身による300点を超える挿画は眺めるだけでも楽しい。原典初版本(1883年刊)を完全復刻した美しい造本」と版元が自慢しているだけあって、たしかに美しい。カラーのイラストも交じったよい本であろう。



■記憶の部屋 印刷時代の文学的−図像学的モデル
リナ・ボルツォーニ=著
足達薫・伊藤博明=訳
ありな書房、A5版上製カバー装、7,500円+税、ISBN 9784756607966

記憶の部屋―印刷時代の文学的‐図像学的モデル

記憶の部屋―印刷時代の文学的‐図像学的モデル

記憶術は、ヨーロッパの長い文化的眺望の中で、知識に形を与え、必要な言葉とイメージを供給する、文化的コードであり、秘文字であり、壮大な修辞学の劇場であり、包括的な知的構造体であった。


アレクサンドリア四重奏 IIバルタザール
ロレンス・ダレル=著
高松雄一=訳
河出書房新社、四六判上製カバー装、本体2,400円+税、ISBN9784309623023

アレクサンドリア四重奏 2 バルタザール

アレクサンドリア四重奏 2 バルタザール

ジュスティーヌが真に愛していたのはぼくではない。それを実証するバルタザールの意見書はぼくを再び迷路に誘い込んだ。恐るべき愛の企み! このアレクサンドリアの街に本当は何が起こったのか??暗い真実の裏側をのぞくと。


■滝山コミューン一九七四
原武史=著
講談社、四六判上製カバー装・284頁、本体価格1,700円+税、ISBN9784062139397

滝山コミューン一九七四

滝山コミューン一九七四

「僕は感動した。子供たちの裏切られた共和国だ!!」??作家・高橋源一郎

マンモス団地の小学校を舞台に静かに深く進行した戦後日本の大転換点。たった1人の少年だけが気づいた矛盾と欺瞞の事実が、30年を経て今、明かされる。著者渾身のドキュメンタリー。
東京都下の団地の日常の中で、1人の少年が苦悩しつづけた、自由と民主主義のテーマ。受験勉強と「みんな平等」のディレンマの中で、学校の現場で失われていったものとは何か? そして、戦後社会の虚像が生んだ理想と現実、社会そのものの意味とは何か?

2007年、今の「日本」は、1974年の日常の中から始まった。


陸の孤島と化した滝山団地にまつわる、著者の自分史を重ねた郊外文化史といったところだろうか。読んでみたいと思う。



■古本暮らし
荻原魚雷=著
晶文社、四六判上製カバー装・224頁、本体1,700円+税、ISBN9784794967107

古本暮らし

古本暮らし

大都会・東京で、ひたすら古本と中古レコードを愛する質素で控えめな生活の中から、古本とのつきあい方、好きな作家の生き方などを個々の作品を通して描く。作家の実人生の機微や妙所も巧みに看破され、おのずと興味深い読書論が展開されている。古本ブームの中で、時代を担う期待人物の一人。80パーセントが書き下ろしとなる。


ここ数年古本やさんをやりたい若い連中が多いと聞いたことがある。古書店をやるというのは決して楽な生き方ではない。古本やの経営者というのは、新刊書店主とは違い、どこか世捨て人の貌をまとっているようで、厳しい生き方をわざわざ選びとっているのではないか。上記の書に目を通してないのでわからないが、ただの物知り目利きという以上の、古本だけに向けられた何ものかが書かれていることを望む。古本が流行するというのは何だかおかしな現象だ。



■PhotoGRAPHICA[フォトグラフィカ] vol.07
インプレスコミュニケーション、A4版変型、本体価格1,500円+税、ISBN9784844359203

PhotoGRAPHICA[フォトグラフィカ]vol.07 2007-Summer

PhotoGRAPHICA[フォトグラフィカ]vol.07 2007-Summer

通 巻 特 集
Wonderful Nude!?素晴らしきヌード写真


二つの後ろハダカが招いているように、篠山紀信のクライハダカ・アカルイハダカのシリーズ。身体の愉悦を覚えます。女性の乳房諸々が総じて美しい(主観に過ぎませんが)のは、かなりモデルの峻別があるのではと勘ぐってしまう。



■もうひとつの声 詩と世紀末
オクタビオ・パス=著
木村榮一=訳
岩波書店、四六判上製カバー装・210頁、本体価格2,600円+税、ISBN9784000253000

もうひとつの声―詩と世紀末

もうひとつの声―詩と世紀末

ノーベル賞詩人パスが,古典時代の叙事詩・長編詩から,サンボリスム,前衛主義といった近代詩にいたるまで,それぞれの特徴と本質を驚嘆すべき博識と犀利な知性によって剔抉しながら,現代社会における詩の機能を検証し,未来において詩が占める位置,担うべき役割を予言する.はたして来るべき時代には,詩は生き延びられるのか?

■アーネスト・ダウスン作品集
アーネスト・ダウスン=著
南條武則=訳
岩波文庫(赤295-1)、298頁、本体価格760円+税、ISBN9784003229514

アーネスト・ダウスン作品集 (岩波文庫)

アーネスト・ダウスン作品集 (岩波文庫)

19世紀英国の世紀末詩人ダウスン(1867−1900)の作品世界は、やるせない慕情、生への倦怠感、還らぬ過去への悔恨に満ち満ちている。名篇「シナラ」をはじめ、たまゆらではかないものへの淡い抒情を哀切に綴った詩34篇と、「エゴイストの回想」「遺愛のヴァイオリン」等5篇の短篇小説を収録。〈愛と秋と酒の詩人〉の詞華集。

矢野峰人平井呈一の翻訳でも知られる英国世紀末詩人ダウスン。南條竹則の新訳版はどうだろうか。



幻想小説も続々と刊行されている。



■ 青い蛇  十六の不気味な物語
トーマス・オーウェン=著
加藤尚宏=訳
創元推理文庫東京創元社)、250頁、本体価格660円+税、ISBN9784488505035

青い蛇―十六の不気味な物語 (創元推理文庫)

青い蛇―十六の不気味な物語 (創元推理文庫)

ベルギーを代表する幻想小説作家オーウェンによる、『黒い玉』と対を成す珠玉の短編集。霧深い夜、宿を求めた酒場で行われていたのは、雌豚を見に行く権利を賭けた奇妙なゲーム。それに勝ち、納屋に案内された男が見たものとは??。悪夢のような一夜の体験を淡々と綴り、長く深い余韻を残す傑作「雌豚」、奇妙な味わいの掌編「青い蛇」など16の不気味な物語を収録。解説=垂野創一郎


バルザック幻想・怪奇小説選集4 ユルシュール・ミルエ
オノレ・ド・バルザック=著
加藤尚宏=訳
水声社、四六版上製カバー装・347頁、本体価格3,000円+税、ISBN9784891766399

ユルシュール・ミルエ (バルザック幻想・怪奇小説選集)

ユルシュール・ミルエ (バルザック幻想・怪奇小説選集)

裕福な医者ミノレと、その養女ユルシュールを軸に展開する遺産相続の悲喜劇。保護者を亡くした娘は、その命さえ脅かされて…「人間喜劇」らしい活気溢れる人間描写の中に埋め込まれた神秘的なメスメリズムが、ユルシュールの運命の変転の鍵を握る。


ダイ・シージエ 『バルザック小さな中国のお針子』 (新島進=訳、ハヤカワ書房、文庫版カバー装・238頁、本体価格660円+税、ISBN9784151200403)の主人公が夢中になったのがこの小説である。

バルザックと小さな中国のお針子 (ハヤカワepi文庫)

バルザックと小さな中国のお針子 (ハヤカワepi文庫)

バルザックと小さな中国のお針子

バルザックと小さな中国のお針子



ダイ・シージエといえば、また次の新刊が出た。



フロイトの弟子と旅する長椅子  《ハヤカワepi ブック・プラネット》
ダイ・シージエ=著
新島 進=訳
早川書房、四六判上製カバー装・326頁、本体価格1,800円+税、ISBN9784152088239

フロイトの弟子と旅する長椅子 (BOOK PLANET)

フロイトの弟子と旅する長椅子 (BOOK PLANET)

〈フェミナ賞受賞〉パリ帰りの(自称)中国人初の精神分析医モーは、政治犯の愛する女性を釈放するため、自転車で夢分析の旅に出る。『バルザック小さな中国のお針子』の著者が贈る長篇第二作

*1:後日譚。版画家加藤清美さんのインタビューや、堀江敏幸氏がコメンテーターとして出演していました。東京・町田市の国際版画美術館にて、常設展:〈菊池伶司とその時代〉が6/24(日)まで開催中です。