鉄道画

urotanken2009-02-09





なかなかパワフルな鉄道画を描く漫画家(?)*1がいる。後藤友香という女の人である。

鉄道画集

鉄道画集

*2

これだけ鉄道の〈顔〉に執着する鉄女(?)がいるとは思いもよらなかった。この強迫衝動は凄い。



〈顔〉たちが、見てるこちらに差し迫ってきて、速度感がある。運転手だとか、乗客などは、まあ稚拙なタッチで下手くそな印象を受けるが、それらを補って余りある電車の〈顔〉たちである。電車は滅法巧い。

画集というだけあって、作者がインスピレーションを受けたものが鉄道の脇に描かれていたり、
書物の文章の抜粋などがコラージュされていて、現代世界の情報の錯綜がキャンバスの平面に畳み込まれているなかを、
電車の〈顔〉が、必ずこちらに向かって突進してくるような構図、真正面から見据えてくるものが多い。これがスリルのある怖さと格好良さを体感させてくれる。



偏見はいかんが、電車の〈顔〉などに魅せられる女性もいるのだなあ、と感心した。*3

そもそも、〈鉄道画〉を描く画家などよくは知らないが、写真家にくらべたらずっと少ないのではないか。それは鉄道を描くということが容易ではないという理由もあるのだろう。カメラならシャッタースピードを上げて、見事に停止しているかのように、〈顔〉を切り取り、静的に定着させることも出来る。それを画でやってみたら……。この画風でいくと、停止しているものが妙にざわついていて不安感を煽っているように、差し迫る。動く。鉄道は動いてこそ鉄道であって、その辺をこの画家は巧く突いているから、感心したのだと言える。

*1:青林工藝舎の作家さんだそうだ。

*2:
 おまけで、「鉄道すごろく」の挟み込み付録がある。
 

*3:鉄道好きの私は、子供の時分からずっと〈顔〉を拝んでいたものだった。今でも、降りた列車がホームを離れるさいの、後ろ〈顔〉を見送ろうとする癖が抜けない。何というか、礼儀というか、たかだかその日の一本の電車に乗ることになったというだけでも、自分が乗っていた電車はどんなであったか、また乗せてくれて運んでくれた電車の勇姿を知っておきたいと思うのである。感謝の念である。