2008.1/2

urotanken2008-01-30






【文学関係】


乳と卵

乳と卵


文学的商品学 (文春文庫)

文学的商品学 (文春文庫)



名短篇、ここにあり (ちくま文庫)

名短篇、ここにあり (ちくま文庫)


名短篇、さらにあり (ちくま文庫)

名短篇、さらにあり (ちくま文庫)



吉田健一対談集成 (講談社文芸文庫)

吉田健一対談集成 (講談社文芸文庫)

小沢書店から出ていたものを文庫化。小沢書店、いい版元だったなあ。


ニートピア2010

ニートピア2010



スモールトーク (角川文庫)

スモールトーク (角川文庫)



ダンシング・ヴァニティ

ダンシング・ヴァニティ

本作は第四回絲山賞受賞作。



オブ・ザ・ベースボール
円城塔著 文藝春秋 1470円
第104回文學界新人賞受賞作。

Boy’s Surface (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)

Boy’s Surface (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)



野荒れ

野荒れ

野坂昭如もそう長くはないのではないかと思うが、記念の一冊のような気がしてならないが、どうだろう。


屋上への誘惑 (光文社文庫)

屋上への誘惑 (光文社文庫)



諸国物語

諸国物語

ポプラ社60周年記念の刊行らしく、作家というよりも文学作品をこだわって取り上げるというコンセプトもあって、なかなかいいが、重量はある一冊だ。チェーホフ『かけ』(原卓也訳)、メルヴィルの『バートルビー』(杉浦銀策訳)、ストリンドベルヒ『一人舞台』(森鴎外訳)など、少しひねった21人21作の世界文学選集。総ルビ。




ロベルト・ムージル

ロベルト・ムージル

分析と解体,自閉と崩壊……現代精神の命運を20世紀初頭に予言し,新しい経験への突破を模索し続けた小説群.その作品による実験の意味を蘇らせるために,渾身の力で対話を試みる.未知の現実に向けた可能性感覚,方法としてのエッセイズム──独自の解釈と批評が,そのまま作家古井由吉の核心をも語っている.


肉体の悪魔 (光文社古典新訳文庫)

肉体の悪魔 (光文社古典新訳文庫)


芸術の体系 (光文社古典新訳文庫)

芸術の体系 (光文社古典新訳文庫)

この期に及んで「アラン」とは渋いところをついてくる。訳者も長谷川宏というドイツ哲学者。アランが好きだったのだろう。



プルーストと身体―『失われた時を求めて』における病・性愛・飛翔

プルーストと身体―『失われた時を求めて』における病・性愛・飛翔

世界に誇る日本人研究者の遺稿集
本書は、2005年6月に54歳で急逝した、国際的なプルースト研究者、吉田城の遺稿集である。『失われた時を求めて』の膨大な草稿を緻密に調査研究し、フランスで最も権威あるプレイヤッド版の校訂まで手掛けた吉田が、晩年とくに精力的に取り組んでいたテーマに、身体および病の問題がある。著者が遺した「『プルーストと身体』著書構想」というメモを基に、吉田とともに常に日本のプルースト研究をリードしてきた吉川一義が論文の選定・構成にあたった。
第一部「プルーストの身体感覚」では、喘息や不眠症、消化不良、性的失敗などの作家自身の身体問題と創作との関わりを論じる。つづく第二部「『失われた時を求めて』における身体表現」では、作品の登場人物たちの身体の描かれ方に焦点を当てる。第三部「同時代の身体表現とプルースト」では、当時パリを席捲した、躍動的なロシア・バレエの世界や、人々が経験したばかりの飛行感覚について論じる。病や性愛、運動の〈場〉としての〈身体〉を軸に、20世紀文学の至宝『失われた時を求めて』が鮮やかに読み解かれる。

プルーストと絵画 レンブラント受容からエルスチール創造へ
吉川一義 岩波書店 A5判上製304頁 定価6,300円 02/26

20世紀を代表する一大長編『失われた時を求めて』にはさまざまな絵画が絶妙な小道具として登場する.本書では,プルーストの絵画受容をていねいに跡づけ,作中での多様な役割を考察するとともに,作中画家エルスチールの作品生成を究明.文学と美術をつなぐ独創的かつ総合的な考察により,作家の創作の秘密にいどむ渾身の論考.

プルースト研究者の二冊が同時期刊行。






愛しのグレンダ

愛しのグレンダ

ボルヘスガルシア・マルケスと並ぶラテンアメリカ文学の中心的作家,コルタサルの代表作.都市の闇,男女の営みにひそむ幻想と恐怖,エロティシズム.パリやブエノスアイレスなどを舞台に意欲的手法で書きつがれる作品は,失われた世界へのノスタルジーと過酷な政治状況を背景に深い感動を呼び,小説の新しい可能性を伝える.

都会派コルタサルの久々の翻訳!


破壊者ベンの誕生 (新潮文庫)

破壊者ベンの誕生 (新潮文庫)

ノーベル文学賞受賞を受けての再刊。


バートルビーと仲間たち

バートルビーと仲間たち


楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)

楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)

存在の耐えられない軽さ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-3)

存在の耐えられない軽さ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-3)



ナイフ投げ師

ナイフ投げ師

自動人形、遊園地、気球飛行、百貨店……ようこそ《ミルハウザーの世界》へ。飛翔する想像力と精緻な文章で紡ぎだす、魔法のような十二の短篇集。語りの凄み、ここに極まる。


レンブラントの夜警

レンブラントの夜警


本棚

本棚

【収録作家】 穂村弘山本幸久角田光代長崎訓子みうらじゅん喜国雅彦大森望中島らも金原瑞人宇野亜喜良吉野朔実川上未映子山崎まどか石田衣良桜庭一樹

同時期に、こんな本も出ていたが、今回はアスペクトの勝ち〜! と思いました。参考までに。

書斎の達人

書斎の達人

関係のないことだが、吉野朔実という漫画家の素顔を本書ではじめて知った。吉野朔実の漫画を最近読むようになったが、これなんか身を切られるような痛ましくせつない名作だと思う(進行中)。
period (1) (Ikki comix)period (2) (Ikki comix)





探偵小説のクリティカル・ターン

探偵小説のクリティカル・ターン





【思想・哲学・歴史・社会】


自死という生き方―覚悟して逝った哲学者

自死という生き方―覚悟して逝った哲学者

「哲学的事業」としての自死を遂行した須原一秀氏の遺稿を、浅羽通明氏が編集・刊行したもの。ネガティヴでニヒリスティックな人生の方向から語られがちの「自死」を、そうではないのではないかと須原はいう。ソクラテス三島由紀夫伊丹十三のケースなどを考えながら、自身最後の書を『新葉隠』として世に問うたかたちとなった。

須原はこんな風に考えた。「人生の高(たか)」「自分の高」*1が知れてしまうときがある。そのとき、「自死」という選択があるというに過ぎないのではないか、と。人生の負に引きずられて「自死」を行うものもあるが、むしろ幸福を味わえたからこそ、衰える老いに抗うための人間の尊厳を死守(!)する積極的な決断として、尊重されてしかるべきなのが「自死」ではないか、と須原はいう*2。カウントダウンの章*3の一節がぽつりと印象に残った。

 つまらないことで気分が落ち込み、以前にもあった同様の失敗を思い出し、つい「あー、死んでしまいたい」とつぶやいている自分に気がついて、苦笑いをしてしまった。
 それで気がついたのであるが、時おり落ち込んだ時につぶやく「ああー、死にたい」などという表現は、落ち込んだ気分を一瞬ほっとさせて救うための手段であった、ということである。
 もう三ヶ月先には死ぬことが確定している人間でも、こんな姑息な手段で自分の気持ちを救っているということは、「死ぬことを前提に生きてこそ、本当の人生を歩むことができる」などという言い草は怪しいものだと感じてしまった。(十二月十八日)*4

大変独創的な着眼点を持っていた哲学者の物書きだった*5だけに、残念で寂しい。




知識だけあるバカになるな!

知識だけあるバカになるな!



保守問答

保守問答



期待と回想 語りおろし伝 (朝日文庫 つ 12-1)

期待と回想 語りおろし伝 (朝日文庫 つ 12-1)



哲学個人授業-<殺し文句>から入る哲学入門 (木星叢書)

哲学個人授業-<殺し文句>から入る哲学入門 (木星叢書)

名インタビュアーとして、人文界(?)、読書界、出版界からひっぱりだこの永江朗氏と、鷲田清一氏との哲学問答と、ときどき編集者の参加の鼎談スタイル。内容もなかなかお手軽でよいが、装幀が軽くてとても綺麗だ。







イカの哲学 (集英社新書 0430)

イカの哲学 (集英社新書 0430)


新現実vol.5

新現実vol.5


ガイドブック的! 観光社会学の歩き方

ガイドブック的! 観光社会学の歩き方

目次が観光していて、具体についているところが興味をそそられる。

1講  香港:バックパッカーたちの「観光経験」と「語り」
2講  ハワイ:メディアがつくる「擬似イベント」
3講  ディズニーランド:「シミュラークル」としての観光
4講  韓国:ドラマの世界を旅する観光客たち
5講  イリノイ:観光地にひびく多様な声
6講  東京:趣味の観光パフォーマンス
7講  神戸:風景の政治学
8講  高知:観光における「伝統の転移」
9講  奈良:これからの観光のあり方
10講 フロリダ・オーランド:人びとに生きる力をあたえる観光

そのうち、「関東」「関西」観光社会学とか、より緻密・具体的になってきたら楽しい……か?



社会科見学に行こう!

社会科見学に行こう!



「モテ」の構造―若者は何をモテないと見ているのか (平凡社新書)

「モテ」の構造―若者は何をモテないと見ているのか (平凡社新書)

「モテないとはどういうことか」を探るために、学生たちが取り組んだ「モテないコスプレ演習」で、見事「オタク」になり切った学生。この演習のあと、『電車男』が人気を呼んだことなどから、「モテないコスプレ演習」では、「オタク」は、「モテないイメージ」ナンバーワンではなくなった。

読んでないので分からぬが、ペット愛好家のあれこれを書いているものと察する。畜生をわざわざ買う人たちの心性には、ある種の慰み、玩具として家畜を選ぶということがあると思う。愛玩というのはまあそういうことだろうが、愛玩者たちのなかには、人間様よりも動物様をことさら崇めている連中もいて、立派な家族の一員だという倒錯的な飼い主だってままいる。猫なんかもそうだが、本来野性味あふれる動物たちを屋外で可愛がる程度で充分ではないかと思ったりするが、まあ血道をあげて犬猫に狂うという趣味があっても悪いことではない。ただ、あんまりとやかく好き好き言う者が出てくると、周りの趣向も変わってくるもので、そういえば犬というものをあまり気にしなくなってしまった。


普遍論争 近代の源流としての

普遍論争 近代の源流としての


かたり―物語の文法 (ちくま学芸文庫)

かたり―物語の文法 (ちくま学芸文庫)


世界制作の方法 (ちくま学芸文庫)

世界制作の方法 (ちくま学芸文庫)



大江戸異人往来 (ちくま学芸文庫)

大江戸異人往来 (ちくま学芸文庫)




江戸はネットワーク (平凡社ライブラリー)

江戸はネットワーク (平凡社ライブラリー)


Jポップを創ったアルバム―1966‐1995

Jポップを創ったアルバム―1966‐1995




貧乏するにも程がある  芸術とお金の“不幸

貧乏するにも程がある 芸術とお金の“不幸"な関係 (光文社新書)

自分らしくあるための「借金生活」の極意
「パンより文学」を生きた芸術至上主義者たち。
彼らに学ぶ破天荒かつ、したたかな生活防衛の術。
本書では、「下流化」につながると槍玉にあげられる「自分らしさ」という価値観に執着し、その価値観がもたらす幸と不幸、欺瞞と真実に、さまざまな作家・芸術家の生き方を通して肉薄する。
自分らしさを貫くために損をし、貧乏をしていた作家・芸術家は数多いが、それでも彼らは己の道を貫きながらどうにか生き延びた。どうすればそれが可能になったのか。その観点から見ると、作家・芸術家たちは狡猾に生き残り戦術を駆使していたことが分かる。彼らの姿は私たちに、自分の生き方や社会のありかたを考える上で、大きな示唆を与えてくれるのではないだろうか。


問題は、躁なんです 正常と異常のあいだ (光文社新書)

問題は、躁なんです 正常と異常のあいだ (光文社新書)

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死刑 人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う

死刑 人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う


フリーペーパーの衝撃 (集英社新書 424B)

フリーペーパーの衝撃 (集英社新書 424B)

フリーペーパーの衝撃 (集英社新書) [ 稲垣太郎 ]



CODE VERSION2.0

CODE VERSION2.0




要するに (河出文庫)

要するに (河出文庫)

ットはどうなる? 会社ってなんーだ? プライバシーって本当に大切?……いろんな領域をまたがって、専門家と非専門家の間を「要するに」とつないでゆく、快刀乱麻、悪口雑言、山形浩生の雑文集。


『要するに』のほうは、どうやら『山形道場』*6の文庫化らしい*7

口さがないほど痛烈に、真に迫っていく評論家ヤマガタヒロオの本が河出文庫版となってこのところ登場。*8この人の言うことはほんと面白いし、タメになることもいっぱいある。ただの口さがなさではなく、傾聴に値する主張がきちんとある。山形は翻訳をすることで、きちんと自分の主張を残していく。その意味でいえば、『CODE VERSION 2.0』でアクチュアルに問われなくてはいけない問題があるのだろうと考えておいてよいだろう。WEBの法典とは何だろうかと考えてしまう自分のくらさが不甲斐ない。




コーヒーハンター 幻のブルボン・ポワントゥ復活
未刊  四六判  256頁  2008.02 ISBN978-4-582-83388-1 C0061

動乱のエルサルバドルでコーヒー研究を開始し、ジャマイカ、ハワイ、スマトラで農園を拓いてきた男が、レユニオン島で絶滅寸前の最高級コーヒーを100年ぶりに復活させた。コーヒー愛飲家必携。

人はなぜ戦争をするのか エロスとタナトス (光文社古典新訳文庫)

人はなぜ戦争をするのか エロスとタナトス (光文社古典新訳文庫)








機関銃の社会史 (平凡社ライブラリー)

機関銃の社会史 (平凡社ライブラリー)

発明当初、アフリカ・アジアの植民地の拡大に使用された機関銃は、第一次世界大戦ではより強力な武器として世界史を変えた。軍事技術と社会のかかわりを鋭く追究した名著。



【芸術・一般】


異能の画家 伊藤若冲 (とんぼの本)

異能の画家 伊藤若冲 (とんぼの本)



松井冬子 一 MATSUI FUYUKO I

松井冬子 一 MATSUI FUYUKO I

発行延びたうえに、分冊ですか。



流線形シンドローム 速度と身体の大衆文化誌

流線形シンドローム 速度と身体の大衆文化誌



えのはなし

えのはなし





【東京・地域・趣味】



新・都市論TOKYO (集英社新書 426B)

新・都市論TOKYO (集英社新書 426B)

タイトルで勝負するのがとりわけ新書の世界のよう。英語まじりの古くささ(TOKIOとかね)で何が「新」なのだか、結局よくわからないタイトルではある。


東京サイハテ観光

東京サイハテ観光

首都圏の隙間をぬう〈路上観察学〉的歩行の記録。写真の不気味さが利いています。


東京愛情

東京愛情

撮影者がアラーキーだと、そこそこ売れるのだろう。


東京読書―少々造園的心情による

東京読書―少々造園的心情による


遅ればせながら、一応掲載。


阪急電車

阪急電車

幻冬舎月刊誌『PAPYRUS』に連載されていた小説。ユニークなのは路線沿線上で、電車の乗客たちの物語を、各駅停車に沿ってすすめているという点。連載誌上のカラーイラストがなくなっているのが残念ではある。

関西人の謎ですねん!

関西人の謎ですねん!


アジェのパリ

アジェのパリ


ゲーテ『イタリア紀行』を旅する (集英社新書ヴィジュアル版) [ 牧野宣彦 ]



パリのパサージュ 過ぎ去った夢の痕跡
平凡社(コロナ・ブックス) 鹿島茂=著 鹿島直=写真
B5変型判  128頁  2008.02 ISBN978-4-582-63435-8

18〜19世紀建造のレトロモダンなアーケード商店街。ボードレールをはじめ文学者たちに愛された鉄とガラスの空間で本や骨董品などに囲まれて、シュルレアル(超現実)な時間旅行を楽しむ。

シュルレアリスム落語宣言

シュルレアリスム落語宣言



巨匠の傑作パズルベスト100 (文春新書)

巨匠の傑作パズルベスト100 (文春新書)

20世紀初頭に大ブームを巻き起こした、デュードニー、サム・ロイド作成のパズル問題を再現。100年前のパズルは今解いても面白さ抜群

名作パズルに挑戦してみてください!
一部の数学者や好事家だけで楽しまれていたパズルを大衆の娯楽にしたのは、サム・ロイド(米)とH・E・デュードニー(英)の二人のパズル作家でした。19世紀末から20世紀初頭にかけて急速に発達した新聞・雑誌は、こぞって二人のパズルを掲載し読者を熱狂させました。数字パズル、図形パズル、魔方陣……100年前のパズルは、今解いても面白いものばかりです。



【科学】


自然科学的世界像 第2版 新装版

自然科学的世界像 第2版 新装版


原子理論と自然記述 新装版

原子理論と自然記述 新装版


構造以来の道―哲学論集1970-1993

構造以来の道―哲学論集1970-1993


みすず書房は新装版を出したりしているのが目立つ。ネタ切れか。

*1:須原はキューブラー・ロスの「死の受動的ないし消極的受容」の五段階説に対し、「死の能動的ないし積極的受容の理論」として五段階説を提示した。その第一段階として、「『人生の全体の高』と『自分自身の高』についてのおおよその納得 a -楽しいこと、うれしいこと、感激すること、苦しいこと、悲しいこと、などの経験を通して、結局『人間が生まれて成長し、良いことも悪いこともわって、老化して、死んでゆく』という人生全体についてのおおよそを体で納得していること b - 自分にできることの範囲のおおよその見当と、自分のして来たこと全体に対するおおよその見通しを体で納得していること c -種々の『極み』を達成することによって、『自分は確かに生きた』という思いを日々体で納得していること」(以上、〈4章 死の能動的受容と受動的受容〉120頁)としている。ここで重要なのは、引用したabc3か条に含まれる「体で納得」(本文の傍点のかわりに強調)しているという箇所と、須原氏の〈極み〉の理論が述べられていることだろう。〈極み〉というのはおそらく、心理学者マズローのいう「至高体験」(ピーク・エクスペリエンス)のことを指しており、日常生活というマンネリズムにあって、この「至高体験」が必ずしも「究極」ではないことに注意したい。その辺りのことは、コリン・ウィルソン至高体験自己実現のための心理学』でも扱われている。至高体験―自己実現のための心理学 (河出文庫)またcの、「『自分は確かに生きた』という思いを日々体で納得している」ことを、どのように伝えられるかという問題に対し、須原はあくまで「三人称の立場からの調査・研究だけでなく、一人称の立場からの実証性も何ほどか確保し、実践的な『死の受容の理論』を目指し、そのための予備的作業仮説を後進のために残しておこうと」(強調は引用者。同章119頁)この書を残すことで、答えようとしたのである。これはなかなか出来ることではない!

*2:ソクラテス三島由紀夫伊丹十三もそうなのではないかと須原は考えている。

*3:10章 雑感と日常

*4:〈10章 雑感と日常〉251頁。強調は引用者。

*5:“現代の全体”をとらえる一番大きくて簡単な枠組―体は自覚なき肯定主義の時代に突入した高学歴男性におくる 弱腰矯正読本―男の解放と変性意識超越錯覚―人はなぜ斜にかまえるか

*6:山形道場―社会ケイザイの迷妄に喝!

*7:たしかこの本、序章を「要するに」で始めていた気が…。

*8:新教養主義宣言 (河出文庫)