山地としてる写真集『豚と共に』〜幸福なものたちの写真

urotanken2009-10-25



山地としてるという写真家が、自前で発行した『豚と共に』という写真集がある。
91枚の写真のうち71枚の写真がモノクロ、終わり20枚がカラー写真で構成されている。





これだけ多幸感あふれる写真集を見たのは、はじめてのことではないかと私は思った。
対象物への愛情あふれる写真集は数限りなく存在しているのであるが…。

『豚と共に』は、飼育される豚たちと養豚家上村さんの幸福な日々の記録である。
写真家山地さんはもとは香川県丸亀市の職員として、農林水産行政に携わり、上村さんと
仕事上の関わりがあったという。「市街化区域内にあった上村さんの畜産業も厳しい情況に
立つことになる」とあるとおり、上村さんは丸亀市から、詫間町香田という広い土地に移転して
養豚業に勤しむ。山地さんは定年退職後に上村さんのもとを久しぶりに訪ね、上村さんの
生活を写真で追い続けることになる。


豚がそもそも愛らしく、可愛い動物という印象はあったが、ここまで、表情豊かな豚の可愛さ、
人なつっこさを垣間見ることはなかった。飼育豚たちが、まるで愛玩動物のように写っている。
豚はみな楽しそうだ。そして何だか旨そうでもある。


飼育者は豚たちと共に、一緒に、いること、その生活を山地氏はただただ写し撮っている。
山地氏の切り取りかた、プリント写真の出来が良いことは言うまでもないけれど、
やはり対象そのものの強さが迫ってきているのだろうと思う。
豚と共に生きることは幸せなのだと、写真群は語っている。
やれ犬だの猫だのと騒がれるタダの動物LOVE写真、と侮るなかれ。一見の価値あり。


通常の書籍流通ではなく、地方書扱い、しかも版元はなく、発行者が写真家その人なので、
amazonで探しても入手できないだろう。*1

*1:ちなみに私は、東京堂書店3Fで購入した。