2010年、本の買い初め

謹賀新年。


今年はどんな本が作れるか。環境が変わることで、作りたい本作る本も変わることでしょう。



先に、荒川洋治さんがラジオで話していた本の買い初め。一冊だけすっきり選べると気持良いのだけど、
例のごとく、気になる数冊を一気に買ってしまいました。2010年、買い初め本は以下のとおり。

白鳥古丹(カムイコタン)―吉田一穂傑作選

白鳥古丹(カムイコタン)―吉田一穂傑作選

東京「進化」論 伸びる街・変わる街・儲かる街 (朝日新書)

東京「進化」論 伸びる街・変わる街・儲かる街 (朝日新書)

非線形科学 (集英社新書 408G)

非線形科学 (集英社新書 408G)


今年も相変わらずの本の買い方。去年に輪をかけて今年は慌ただしいので、新書を有効活用しようと思います。その気持もあってか、文庫ではなく新書が3冊。1冊は大好きな詩人吉田一穂(いっすい)を読み直す贅沢本の『白鳥古丹(カムイコタン)』。幻戯らしい一冊です。*1興味範囲も変わらず文藝、評論(全般)、東京(都市)論、科学論です。



東京についてはいい加減、文化的功罪の大きいあの出来事について、誰もきちんと正面切っての批判を加えていないので、誰かに書いて貰いたいと思い、都市(論)再考、企画検討中。


東京といえば、坪内某のノスタルジー駄文には正直、むかつきをおぼえます。*2ご本人が特集した「en-taxi」の特集題目は、いつぞやの「東京人」のまんまで、東京のことではなく、ご自身のことを仰っているのでは。*3のっぺらぼうなのは、東京ではなく、他ならぬ自分自身のことではないですか。*4ご自身の所在なさと東京の現状をすり替えないでいただきたい。*5盛り場にしか興味がなく、ノレナイ消費者意識でいるのなら、もう東京を云々しても仕方がないのでは。情報にまみれて消費するだけなら、本なぞ読まなくともネットでも何でも便利なものがあるでしょ。版元F社ともども、バブル世代のくそったれた発想が相も変わらずのさばっていて、オリンピック東京招致失敗の事実も、不思議な縁があるように思えてなりません。都民はそんなにばかものではないですよ。面白くないなら、面白くしようという発想もないものかね。

ちょっとした悪口雑言、失敬。


ちなみに、2009年買い納めは、「本の雑誌」1月号で紹介されていて、慌てて買った次の本でした。


そして、今月のとっておきの(期待半分も含めての)本は、こんなところでしょうか。まだまだあるかと思いますが。

ジョルジュ・ペレック『煙滅』(塩塚秀一郎訳・水声社・3360円)*6
○『聖地巡礼NAVI』飛鳥新社・予価1000円)*7
○原克『美女と機械―健康と美の大衆文化史―河出書房新社・2520円)*8
○『図説 日本鉄道会社の歴史』(松平乘昌編 杉山正司著・河出書房新社・1890円)*9
管啓次郎『斜線の旅』(インスクリプト・2520円)*10
佐藤亜紀陽気な黙示録 ─大蟻食の生活と意見〜これまでの意見編〜ちくま文庫・1155円)*11
○ジョウゼフ・コンラッドコンラッド短篇集』(井上義夫編訳・ちくま文庫・903円)*12
◎『ゴンクールの日記(上)』(斎藤一郎編訳・岩波文庫・1260円)*13

*1:解説は堀江敏幸さん。

*2:取り巻き編集者に優れた人がいないということなのか。だからろくな本が出てこないのだ。もう上がったり、のような観がある。坪内さん、本当にそれで良いのかい。

*3:なかでも、酒井順子は冷静な視点で渋谷を顧みていて、流石であった。

*4:磯田光一川本三郎坪内祐三の東京論者の系譜を私自身、期待し過ぎていたのかも知れない。

*5:こういうのも文化的なメディアの犯罪につながるのではないだろうかと懸念する。

*6:フランス語では欠かせない「e ウ」を使わない奇妙なゲーム的試みの小説がついに翻訳化。誰も翻訳できないだろうと言われていた奇書のひとつ。

*7:コミック・アニメの聖地となった日本の地所をガイドする本、らしい。土地のガイドブックとしても面白そうである。

*8:20世紀テクノロジーから、女性美に迫る文化史、だろう多分。

*9:近現代の鉄道会社の歴史をビジュアル豊富に伝えてくれるもの。

*10:旅もの論者の面目躍如。文章も相変わらず心地よいだろう。

*11:グローバリズム・高度情報化社会の世相に痛烈に迫ってくれる本、だろう。

*12:岩波版とセレクションはどう異なるか?

*13:永らく絶版だったので、これはありがたい。