中空都市のススメ

urotanken2007-09-02




知り合いが教えてくれたNHKみんなのうたの「道」という歌とアニメーション。






こんな街があったらどれだけ愉しいことだろう。まさに遊園地都市である。電線電柱がじゃがじゃしているのはすっきりしていないから、好きでないという向きもあるだろう。だが異質なものの複合体こそ都市の姿なのだから、上手に隠蔽する必要はないというのがぼくの意見。日本は所詮、西洋的足らんとしても、広場を作っても習俗にかなわない。だから、中国のようなアジアな都市がきっとお似合いなのだ。不均衡で均質ではないという問題が誰の目にも山積してみえることが重要とは必ずしも言わない。それでも、相容れないものの共存空間が現出していることに目を向けられること、受け入れることが、健全な社会という風景であって欲しいと願う。たとえば、東京利用者の誰もがスピーディに生活することを望んでいるわけではないはずだ。だとすれば、現今の東京の交通体系のなかで、ちんちん電車の遅さこそをわざわざ求める移動の贅沢だって許容されてよい。わざわざちんちん電車に乗ってゆっくりと遠回りで帰る贅沢さ。


ちんちん電車が地上と中空を自由に架橋するこのアニメーションの世界はユートピア都市なのだが*1、土地も有限である以上、中空に手を染めるユートピア志向がどうして現れてこないのか、不思議である。六本木ヒルズにしたって、地上げ屋の森ビルが本当に東京を革新したい気があれば、六本木を根こそぎならぬ空こそぎ、覆い尽くす建物を創造してみたってよい。東京のなかの地所争いに終始しているのはちっちゃな話である。どんな立派で高いビルを建てても、所詮ビルにすぎない。垂直軸から水平軸へと発想をずらしてみてはいかが。おっきな話としては、早稲田大学理工学部建築学科所属、尾島敏雄教授の東京バベルタワーThe tower of Tokyo Babel)という構想がある。このタワーは地上10,000mの超々高層建築プロジェクトで、高さによって使用区分が7つの圏域に分かれている。*2


1)地下大深度空間
  基礎構造体 高速交通機関/備蓄スペース

2)地表から300メートル
  コミュニティ公共空間

3)300から1000メートル
  人界領域 住居・商業の複合施設

4)1000から3500メートル
  雲界領域 オフィスやホテル機能

5)3500から6000メートル
  空界領域 教育やレジャー施設

6)6000から9000メートル
  臨界領域 工場や実験施設・各種研究機関

7)9000から10000メートル
  太陽エネルギー・コレクター/宇宙開発ステーション

*3


こんなタワーが完成した暁には、住民が都市を外から見ることなどもはや不可能になるだろう。都市そのものが惑星のようなステーションになってしまう感覚ではないだろうか。青写真でも未来都市を想像してみるほうが案外現実的とは、さすがに言えないか。

*1:鉄コン筋クリート (1) (Big spirits comics special)鉄コン筋クリート (2) (Big spirits comics special)鉄コン筋クリート (3) (Big spirits comics special)鉄コン筋クリート (通常版) [DVD]鉄コン筋クリート ART BOOK シロside 建築現場編鉄コン筋クリート ART BOOK クロside 基礎工事編電線やらで空がかぎ裂きになっているこのアジアンな東京絵図は、松本大洋の「鉄コン筋クリート」の風景にも似ている。

*2:タモリ倶楽部」にて、このタワーが出来た後の東京の世界についてタモリは、一般庶民は「地上の人」と呼ばれるようになり、地上は鬱蒼とした森で覆われ、空の人が「森の人」に会いに行くという妄想をめぐらしていた。格差は絶望的なまでに開ききって、階級社会が完全に根付く?!

*3:詳細は、ジャパンナレッジの「荒俣宏の新・想像力博物館」の「SKYSCRAPERS -高層建築の世界-」というコンテンツから引用したものである。