「壁の本」〜街のテクスチャアを集めた壁写真
- 作者: 杉浦貴美子
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2009/09/02
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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壁の肌理に注ぐもの
街中に絵があふれている。
帯文にそう謳われるとおり、壁写真の画集というべき本。写真のキャプションはそれぞれ、壁の撮影された街名になっている。
著者の言う壁とは、「地球に対して垂直な平面」のこと。
都市のさまざまな垂直平面を踏査して、肉眼でそれを確かめ、テクスチャアに触れて、レンズを近づける。眺めては凝視し、覗う。
都会ならではの時間変遷のなか、剥き出しになっていく壁の破綻のあらわれを、珍奇なものとして蒐めて巡るという点では、路上観察学会の精神と何ら変わりないように見える。しかし、壁の痕跡の肌理を、アートとして取り扱うような蛮行の意志は見られない。むしろ、「摩滅の賦」(四方田犬彦*1)といった滅び朽ちゆくものの、刹那の美を捉えるという感覚に近い。壁というものが、幾重もの平面の折り畳まれた人工かつ自然の歴史の一部であるということ。先代の平面を覆い隠す当代の平面もまたみずから後代に隠されていくか、そのまま剥き出しのまま綻んで朽ちていく。そうした平面の多層な自然を、単層のテクスチャアとして扱う態度は、おそらく画家にはないものだ。
一枚の写真に収めるという、写真家の歴史を記録したいという意識のほうが勝っているようだ。
*1:
「シネリテラシー」創刊
著者さんとの付き合いで、「シネリテラシー」という機関誌第一号を、今月半ばに出します。少部数ゆえ、ご購入希望の方は版元ドットコムにて。なお、第15回 KAWASAKIしんゆり映画祭2009の会場でも販売いたします。
序――映画は世界市民へのパスポート…………004アジア・映画・教育、それぞれの肖像――1
日中韓合作映画「三つの港の物語」について | 佐藤忠男…………006
シネリテラシー教授法――オーストラリアの挑戦 | 千葉茂樹…………012
2008年10月26日 豪日学生映画フォーラム(要約)…………024
映画制作は最高の教育である | 武重邦夫…………026
ジュニア映画制作ワークショップの果たす意味とは何か | 橋本信一…………029
第9回ジュニア映画制作ワークショップ――その進行と特徴 | 浜口文幸…………033
教育における映画の可能性 | 安岡卓治…………037
KAWASAKIしんゆり映画祭・ジュニア映画制作ワークショップの取り組み | 佐野亨…………040
地域映画と映像教育の文化史――1
藤川治水と熊本映画サークル運動 | 佐野亨…………044
つくばにおけるシネマワークショップの取り組み――1 | 西岡貞一…………048
フツーの高校生のための映画製作授業 | 中山周治…………050
シネリテラシー 失敗力を鍛える映画制作の授業――ドキュメンタリー映画の場合 | 中山周治…………056
企業人としての参加! 映画制作授業にハマって | 長尾国満…………069
僕たちの映画、シネコンで上映されたよ!――川崎市立川中島小学校5年生の取り組み | 広岡真生…………071
教育普及活動と映像教育の狭間で――1 | 昼間行雄…………074
人間発見の道程――映画学校の卒業制作 | 小桜拓也…………076
映画/教育批判序説――1 | 岸川真…………080
シネマテークと映像教育の可能性――東京国立近代美術館フィルムセンター主任研究員・岡田秀則氏に訊く…………082
アニメの来た道――1
恐竜の20世紀――ガーティからベイリーンまで | おかだえみこ…………088
吉備びと | 小野民樹…………096
ひと月無しの急ピッチ、低予算で作った割には、ましな出来か、な?*2
無知な私も映画人の世界を少しづつ垣間見ることが出来、ありがたいことである。伝道師の良し悪しで、未知の世界は拓けてゆく。
またまた草森本の登場。
草森本、ラッシュは続きます。河出からまた『本の読み方 墓場の書斎に閉じこもる』出ます。
草森さんこそ、正真正銘の「本人 hon-nin」だ。
彼ほど本を読んでいる人はなかなかお目にかかれない。
いや、もうお目にはかかれない。本人にお会いできない、それが本当に悔しい。
本で出会おう、せめて。
本の世界、文の世界、草森紳一という世界を知るにきっとよい一冊ではなかろうか。
発売11日は大書店にGO! だ。
やはり、平台で手に取って、
見たい触れたいめくりたい買いたいし、買う。
読みたいし、で読む。
読むべし!
- 作者: 草森紳一
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2009/08/08
- メディア: 単行本
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*1:表紙で使われた写真の少女は、十中八九、愛娘のE子さんだろう。
7月購入検討本
新刊・既刊・古書含みます。*1
追加書目7/23
●長谷川一『アトラクションの日常』(河出書房新社)
●青山南『旅するアメリカ文学 名作126』(アクセス・パブリッシング)
●堀江敏幸『彼女のいる背表紙』(マガジンハウス)
◎松村由利子『物語のはじまり―短歌でつづる日常』(中央公論新社)
●都筑道夫『都筑道夫の読ホリデイ 上・下』(フリースタイル)
●美濃瓢吾『逐電日記』(右文書院)
●ヴァレリー・ラルボー(石井啓子訳)『恋人たち、幸せな恋人たち』(ちくま文庫)●ユーリック・オコーナー編著(宮田恭子訳)『われらのジョイス―五人のアイルランド人による回想』(みすず書房)
●ジョージ・オーウェル(高橋和久訳)『一九八四年 新訳版』(ハヤカワepi文庫)
●オリヴァー・サックス『妻を帽子とまちがえた男』(ハヤカワ文庫NF)
●ピーター・バーク『知識の社会史―知と情報はいかにして商品化したか』(新曜社)●草森紳一『フランク・ロイド・ライトの呪術空間―有機建築の魔法の謎』(フィルムアート社)
○坂口恭平『TOKYO一坪遺産』(春秋社)
●テレビ欄研究会編『ザ・テレビ欄 1975〜1990』『ザ・テレビ欄 1991〜2005』(ティー・オーインターネット)
●『〈 KAWADE夢ムック〉宮脇俊三―時刻表が生んだ鉄道紀行』(河出書房新社)●下東史明『トレインイロ』(朝日出版社)
…情報というのは、情報そのものが大事なのではない。その情報を「誰がどのように語るか」ということが大事なのである。
…なぜ、本や映画が良質な情報を持つのかというと、それは媒体の持っている「規模の自浄作用」と言うべきものの結果である。ネットや携帯電話の情報と異なり、本や映画というのは、発信するだけで大変なコストを必要とする。それだけに、何でもかんでも発信するというわけにはいかず、さまざまな基準で情報を選別し、選ばれたものだけが本や映画となり、読者や観客に届くわけだ。規模が大きい媒体だけに、その自浄作用で、良質な情報が優先して発信されることとなる。
●午堂登紀雄『お金の流れを呼び寄せる 頭のいいお金の使い方』(日本実業出版社)
●唐沢俊一『博覧強記の仕事術―効率的なインプット&魅力的なアウトプット指南』(アスペクト)
*1:[●…買った(注文済みの)もの ◎…85%買う ○…70%買う ●…50%買う]
草森本続々刊行!
草森本がまたまた出ます。
フィルムアート社から、草森紳一著、大倉舜二さん写真による『フランク・ロイド・ライトの呪術空間 有機建築の魔法の謎』が出ます!
- 作者: 草森紳一,大倉舜二
- 出版社/メーカー: フィルムアート社
- 発売日: 2009/07/24
- メディア: 単行本
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これで、未収録の*1フランク・ロイド・ライト論が読めます。6月24日発売だそう。amazonで予約が出来ます*2。
[[]]
*1:『軍艦と草原 分別と無分別』(九藝出版)にもフランク・ロイド・ライト論が収録されています。
*2:しました