「壁の本」〜街のテクスチャアを集めた壁写真

urotanken2009-10-03




壁の本

壁の本

壁の肌理に注ぐもの

街中に絵があふれている。

帯文にそう謳われるとおり、壁写真の画集というべき本。写真のキャプションはそれぞれ、壁の撮影された街名になっている。

著者の言う壁とは、「地球に対して垂直な平面」のこと。
都市のさまざまな垂直平面を踏査して、肉眼でそれを確かめ、テクスチャアに触れて、レンズを近づける。眺めては凝視し、覗う。
都会ならではの時間変遷のなか、剥き出しになっていく壁の破綻のあらわれを、珍奇なものとして蒐めて巡るという点では、路上観察学会の精神と何ら変わりないように見える。しかし、壁の痕跡の肌理を、アートとして取り扱うような蛮行の意志は見られない。むしろ、「摩滅の賦」四方田犬彦*1といった滅び朽ちゆくものの、刹那の美を捉えるという感覚に近い。

壁というものが、幾重もの平面の折り畳まれた人工かつ自然の歴史の一部であるということ。先代の平面を覆い隠す当代の平面もまたみずから後代に隠されていくか、そのまま剥き出しのまま綻んで朽ちていく。そうした平面の多層な自然を、単層のテクスチャアとして扱う態度は、おそらく画家にはないものだ。
一枚の写真に収めるという、写真家の歴史を記録したいという意識のほうが勝っているようだ。

*1:

摩滅の賦

摩滅の賦

頑張れ!双書Zero

urotanken2009-09-11


筑摩書房から〈双書Zero〉シリーズが創刊されます。

敏腕編集者Iさんの立案企画。

装幀はミルキィ・イソベ氏。理論社の素晴らしいYA新書〈よりみちパン!セ〉シリーズ、河出の〈14歳の世渡り術〉シリーズを凌ぐか?! 1周年したときに、相貌は見えてくるでしょう。
筑摩ならではの多彩で硬派な内容も期待できそう。*1

9月26日、一挙に3冊刊行、でスタート。

個人的には、中島岳志著『朝日平吾の鬱屈』の中身が楽しみです。
頑張れ!双書Zero

*1:社会学系論者が多そうです。

「シネリテラシー」創刊

urotanken2009-09-02



著者さんとの付き合いで、「シネリテラシー」という機関誌第一号を、今月半ばに出します。少部数ゆえ、ご購入希望の方は版元ドットコムにて。なお、第15回 KAWASAKIしんゆり映画祭2009の会場でも販売いたします。


――映画は世界市民へのパスポート…………004

アジア・映画・教育、それぞれの肖像――1
日中韓合作映画「三つの港の物語」について | 佐藤忠男…………006


シネリテラシー教授法――オーストラリアの挑戦 | 千葉茂樹…………012

2008年10月26日 豪日学生映画フォーラム(要約)…………024

映画制作は最高の教育である | 武重邦夫…………026

ジュニア映画制作ワークショップの果たす意味とは何か | 橋本信一…………029

第9回ジュニア映画制作ワークショップ――その進行と特徴 | 浜口文幸…………033

教育における映画の可能性 | 安岡卓治…………037

KAWASAKIしんゆり映画祭・ジュニア映画制作ワークショップの取り組み | 佐野亨…………040

地域映画と映像教育の文化史――1
藤川治水と熊本映画サークル運動 | 佐野亨…………044


つくばにおけるシネマワークショップの取り組み――1 | 西岡貞一…………048

フツーの高校生のための映画製作授業 | 中山周治…………050

シネリテラシー 失敗力を鍛える映画制作の授業――ドキュメンタリー映画の場合 | 中山周治…………056

企業人としての参加! 映画制作授業にハマって | 長尾国満…………069


僕たちの映画、シネコンで上映されたよ!――川崎市川中島小学校5年生の取り組み | 広岡真生…………071

教育普及活動と映像教育の狭間で――1 | 昼間行雄…………074

人間発見の道程――映画学校の卒業制作 | 小桜拓也…………076

映画/教育批判序説――1 | 岸川真…………080

シネマテークと映像教育の可能性――東京国立近代美術館フィルムセンター主任研究員・岡田秀則氏に訊く…………082

アニメの来た道――1
恐竜の20世紀――ガーティからベイリーンまで | おかだえみこ…………088


吉備びと | 小野民樹…………096

日本映画学校*1監修。


ひと月無しの急ピッチ、低予算で作った割には、ましな出来か、な?*2


これから、さらに多彩な執筆陣が増える予定。圧巻は小野民樹さん*3の寄稿された長文の「吉備びと」*4

無知な私も映画人の世界を少しづつ垣間見ることが出来、ありがたいことである。伝道師の良し悪しで、未知の世界は拓けてゆく。

*1:今村昌平監督が創立した映画学校。川崎市新百合ヶ丘にあります。

*2:マットスミののり方にむらがあり、印刷所のへぼさがイヤになるが、勝手に選べないので、やむなく。

*3:岩波書店の名編集者。岩波現代文庫の創刊者。

*4:当巻のなかでかなり異質だが面白い読み物。

またまた草森本の登場。

urotanken2009-08-07



草森本、ラッシュは続きます。河出からまた『本の読み方 墓場の書斎に閉じこもる』出ます。

草森さんこそ、正真正銘の「本人 hon-nin」だ。

彼ほど本を読んでいる人はなかなかお目にかかれない。
いや、もうお目にはかかれない。本人にお会いできない、それが本当に悔しい。
本で出会おう、せめて。


本の世界、文の世界、草森紳一という世界を知るにきっとよい一冊ではなかろうか。

発売11日は大書店にGO! だ。


やはり、平台で手に取って、

見たい触れたいめくりたい買いたいし、買う。
読みたいし、で読む。
読むべし!


本の読み方

本の読み方

*1

*1:表紙で使われた写真の少女は、十中八九、愛娘のE子さんだろう。

7月購入検討本




新刊・既刊・古書含みます。*1



追加書目7/23
アトラクションの日常旅するアメリカ文学 名作126
長谷川一『アトラクションの日常』(河出書房新社
青山南『旅するアメリカ文学 名作126』(アクセス・パブリッシング

ブダペストの古本屋 (ちくま文庫)彼女のいる背表紙物語のはじまり―短歌でつづる日常都筑道夫の読ホリデイ 上巻
都筑道夫の読ホリデイ 下巻柳田泉の文学遺産〈第3巻〉
逐電日記
徳永康元ブダペストの古本屋』(ちくま文庫


堀江敏幸『彼女のいる背表紙』(マガジンハウス)

松村由利子『物語のはじまり―短歌でつづる日常』(中央公論新社

都筑道夫都筑道夫の読ホリデイ 上・下』(フリースタイル)

柳田泉柳田泉の文学遺産 第3巻』(右文書院)

美濃瓢吾『逐電日記』(右文書院)

恋人たち、幸せな恋人たち (ちくま文庫)ボヴァリー夫人 (河出文庫)われらのジョイス――五人のアイルランド人による回想
妻を帽子とまちがえた男 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
ヴァレリーラルボー(石井啓子訳)『恋人たち、幸せな恋人たち』(ちくま文庫

フローベール(山田爵訳)『ボヴァリー夫人』(河出文庫

●ユーリック・オコーナー編著(宮田恭子訳)『われらのジョイス―五人のアイルランド人による回想』(みすず書房

ジョージ・オーウェル高橋和久訳)『一九八四年 新訳版』(ハヤカワepi文庫)

オリヴァー・サックス『妻を帽子とまちがえた男』(ハヤカワ文庫NF)

知識の社会史―知と情報はいかにして商品化したかフランク・ロイド・ライトの呪術空間 有機建築の魔法の謎
TOKYO一坪遺産
ザ・テレビ欄 1975~1990ザ・テレビ欄2 1991~2005
ピーター・バーク『知識の社会史―知と情報はいかにして商品化したか』(新曜社

高山宏『かたち三昧』(羽鳥書店

草森紳一フランク・ロイド・ライトの呪術空間―有機建築の魔法の謎』(フィルムアート社)


坂口恭平『TOKYO一坪遺産』(春秋社)


テレビ欄研究会編『ザ・テレビ欄 1975〜1990』『ザ・テレビ欄 1991〜2005』(ティー・オーインターネット)

堀内誠一 (コロナ・ブックス)線の冒険 デザインの事件簿
岸田衿子出口裕弘巖谷國士ほか著『〈コロナ・ブックス〉堀内誠一 旅と絵本とデザインと』(平凡社

松田行正『線の冒険―デザインの事件簿』(角川学芸出版

宮脇俊三 (KAWADE夢ムック 文藝別冊)トレインイロ
週刊 東洋経済 2009年 7/4号 [雑誌]
●『〈 KAWADE夢ムック〉宮脇俊三―時刻表が生んだ鉄道紀行』(河出書房新社

下東史明『トレインイロ』(朝日出版社

「週刊 東洋経済」2009年 7/4号(東洋経済新報社)特集・「鉄道」進化論

新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く単純な脳、複雑な「私」
世界は分けてもわからない (講談社現代新書)
アルバート・ラズロ・バラバシ『新ネットワーク思考〜世界のしくみを読み解く〜』(NHK出版)

池谷裕二『単純な脳、複雑な「私」』(朝日出版社

福岡伸一『世界は分けても分からない』(講談社現代新書

林達夫芸術論集 (講談社文芸文庫 はK 1)帰りたい風景―気まぐれ美術館 (新潮文庫)
林達夫林達夫芸術論集』(講談社文芸文庫

洲之内徹『帰りたい風景―気まぐれ美術館』(新潮文庫

ユリイカ2009年7月号 特集=メビウスと日本マンガ
B砂漠の40日間
○「ユリイカ2009年7月号 特集=メビウスと日本マンガ」(青土社
メビウス『B砂漠の40日間』(飛鳥新社

BREASTS 乳房抄/写真篇
睦月影郎『追憶の真夜中日記〜24年間の記録』(マドンナメイト文庫)

伴田良輔「Breasts―乳房抄/写真篇」(朝日出版社

頭のいいお金の使い方

博覧強記の仕事術情報というのは、情報そのものが大事なのではない。その情報を「誰がどのように語るか」ということが大事なのである。
 …なぜ、本や映画が良質な情報を持つのかというと、それは媒体の持っている「規模の自浄作用」と言うべきものの結果である。ネットや携帯電話の情報と異なり、本や映画というのは、発信するだけで大変なコストを必要とする。それだけに、何でもかんでも発信するというわけにはいかず、さまざまな基準で情報を選別し、選ばれたものだけが本や映画となり、読者や観客に届くわけだ。規模が大きい媒体だけに、その自浄作用で、良質な情報が優先して発信されることとなる。


●午堂登紀雄『お金の流れを呼び寄せる 頭のいいお金の使い方』(日本実業出版社
唐沢俊一『博覧強記の仕事術―効率的なインプット&魅力的なアウトプット指南』(アスペクト

大不況には本を読む (中公新書ラクレ)社会学入門 〈多元化する時代〉をどう捉えるか (NHKブックス)
ニッポンの思想 (講談社現代新書)
はじめての言語ゲーム (講談社現代新書)
橋本治『大不況には本を読む』(中公新書クラレ

稲葉振一郎社会学入門―〈多元化する時代〉をどう捉えるか』(NHKブックス

佐々木敦『ニッポンの思想』(講談社現代新書

橋爪大三郎『はじめての言語ゲーム』(講談社現代新書



*1:…買った(注文済みの)もの ◎…85%買う ○…70%買う ●…50%買う]

草森本続々刊行!

urotanken2009-06-17




草森本がまたまた出ます。

フィルムアート社から、草森紳一著、大倉舜二さん写真による『フランク・ロイド・ライト呪術空間 有機建築魔法』が出ます! 


フランク・ロイド・ライトの呪術空間 有機建築の魔法の謎

フランク・ロイド・ライトの呪術空間 有機建築の魔法の謎


これで、未収録の*1フランク・ロイド・ライト論が読めます。6月24日発売だそう。amazonで予約が出来ます*2

[[]]

*1:軍艦草原 分別無分別』(九藝出版)にもフランク・ロイド・ライト論が収録されています。

*2:しました

新出版社・羽鳥書店

urotanken2009-06-11





本屋といっても、書店ではなく版元。羽鳥書店という出版社ができておりました。*1




羽鳥さんはもともと東京大学出版会の編集者のお方*2。どんな本を出すかというと、ぼくの興味からいうと、東大出版会のPR誌「UP」に連載していた『かたち三昧高山宏。この本は7月下旬発売とのこと。同著者では、あちこちで書いているものをまとめたと思しい*3新人文感覚I・II』。こちらも今年冬12月〜来年1月に発売予定です。出版社の今後、ラインナップも楽しみです。「相互に旅をする人」というブログもやられているようです。

*1:版元ドットコムに入会されていたのでわかりました。

*2:一度だけ、お話ししたことがあります。

*3:高山宏氏談