文学という毒

9月下旬に、青山学院大学文学部日本文学科主催(国際シンポジウム、らしいが、そんな感じもしない小さなイヴェント)に行ってみた。はじめに市川團十郎(青学の客員教授らしい)と学長武藤元昭氏(日本文学者)の歌舞伎をめぐるおしゃべりがあり(つまらん話…

優れた二、三のビュトール論から享けたこと

ぼくはミシェル・ビュトール(Michel Butor,1926- )という作家に出会わなければ、フランス語学習はおろか、仏文専攻にまで進もうとは思わなかった。 大学院から仏文に入ったわけだが、研究なんて大袈裟なことはこれまで一度もしなかったと思う。フランス文…

2007.9の新刊(8月含む)

【文学】 墓碑銘 (講談社文芸文庫)作者: 小島信夫出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/09/10メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 6回この商品を含むブログ (21件) を見るアイロンと朝の詩人―回送電車〈3〉作者: 堀江敏幸出版社/メーカー: 中央公論新社発売日…

鉄道音、「楽」から「学」へ

昨日の東京新聞夕刊の音楽芸能欄に、「杉ちゃん&鉄平」なるコンビによる、《クラシック・鉄道オタク融合》という見出しで、記事がでかでかと載っていた。「音楽つれづれ」の五輪真弓はさておき、それも、スティーリー・ダン来日公演を退けてまで! 〈冗談音…

中空都市のススメ

知り合いが教えてくれたNHKみんなのうたの「道」という歌とアニメーション。 こんな街があったらどれだけ愉しいことだろう。まさに遊園地都市である。電線電柱がじゃがじゃしているのはすっきりしていないから、好きでないという向きもあるだろう。だが異質…

新奇な文芸誌のゆくえ

「FICTION ZERO/ NARRATIVE ZERO」(講談社文芸X出版部)という文芸誌的な単行本*1が出た。 FICTION ZERO/NARRATIVE ZERO作者: 古川日出男/東浩紀/小島アジコ,講談社文芸X出版部出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/08/02メディア: 単行本購入: 1人 クリッ…

8月新刊中心に

〈日本文学〉逃亡くそたわけ (講談社文庫)作者: 絲山秋子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/08/11メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 12回この商品を含むブログ (102件) を見る*1 キルプの軍団 (講談社文庫)作者: 大江健三郎出版社/メーカー: 講談社発売…

理想の街?!、沼袋

先に、理想の街をこう思い描いたことがあった。 武蔵小山のような商店街か下高井戸の食料品店があって、南阿佐ヶ谷の書原本店のような本屋さんがあり、大森は山王や馬込のような起伏があり、ドトールコーヒーかサンマルク・カフェ、そしてぽえむのような珈琲…

ふた安心

仕事をしていたら、郵便物が届く。 NTT出版の編集の方から高山本を頂戴した。おお、助かった、危うく買うところだったよ。ほっと安心。超人高山宏のつくりかた (NTT出版ライブラリーレゾナント)作者: 高山宏出版社/メーカー: NTT出版発売日: 2007/08/01メデ…

〈cm/sm〉のディスタンス

【ネタバレ注意】 何年ぶりか、御茶ノ水から秋葉原までぶらりと歩いた。聖橋の袂にベビーカステラの出店があり、注文しようとすると、ちょっと待ってねとお爺さん。焼き上がりの肝心な時なのだろう。頃合いを見計らい、注文をきりだそうとすると、6個でしょ…

悪くはならない?!

はっきりいってどうでもいいことだが、HONDAの車ZESTのCMをみると、首をかしげてしまう。 近未来風ハイテク工場で、macのデスクトップのような画面に向き合い、なにやらパネルタッチする倖田來未。次々量産できるシステムにご満悦の笑みを思わず浮かべる(社…

7月刊本など

ふたりの博士(ヒロシ/ハカセ)の書物が刊行。*1 アラマタ大事典作者: 荒俣宏出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/07/13メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 35回この商品を含むブログ (30件) を見る 好奇心があれば、一生、退屈しないぞ!! アラマタ博…

ただいま純愛中

*1 R25指定になりましたので*2、再度宣伝をば。 『日本文学にみる純愛百選 zero degree of 110 love sentences』ですが、 4月中旬から好評につき(?)、紀伊國屋書店新宿南店にて、“純愛フェア”続投中です。ショーウィンドウにてポスター看板があります(是…

『純愛百選』R25指定

日本文学にみる純愛百選 zero degree of 110 love sentence作者: 芳川泰久,江南亜美子,荻野哲矢,駿河昌樹,高頭麻子,十重田裕一,三ッ堀広一郎,望月旬,山崎敦,和久田頼男出版社/メーカー: 早美出版社発売日: 2018/01/22メディア: 単行本(ソフトカバー) クリ…

6月の新刊・近刊本

われわれはみな外国人である―翻訳文学という日本文学 (五柳叢書)作者: 野崎歓出版社/メーカー: 五柳書院発売日: 2007/06メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 34回この商品を含むブログ (10件) を見る 翻訳は日々あたらしい。今読者に伝わる言葉は、どう創ら…

〈圧縮〉できる文学?!

5月19日明治大学にて行われた、日本フランス語フランス文学会でのワークショップのひとつ、ジュール・ヴェルヌ再発見と題したヴェルヌの発表を聞いた。発表者は私市(きさいち)保彦氏、新島進氏、石橋正孝氏、芳川泰久氏の4方(発表順)。私市氏は文学史か…

5月の店頭本で読んでいる本買った本欲しい本

店頭に並んでいたものをリストアップ。■菊池伶司 版と言葉 The Etchings of Reiji Kikuchi,1946-1968 堀江敏幸・柄澤齊・加藤清美=著 A5判並製カバー装、176頁、本体価格2,200円+税、ISBN978458270269-9 菊池伶司 版と言葉作者: 堀江敏幸,柄澤齊,加藤清美出…

20世紀世界文学全集

河出書房新社創業120周年記念として、池澤夏樹=個人編集の〈世界文学全集〉全24巻が刊行されるそうだ。 2007年11月〜2009年12月に刊行予定だと…う〜ん初訳、新訳も結構あるなぁ、全巻買うかどうか。それが問題だ。2~3000円台でさほど高くはないしなあ。第一…

文学の新刊本を出しました。

『日本文学にみる純愛百選ーzero degree of 110 love sentences』という本を出しました。芳川泰久さん監著、執筆者多数でなかなか多様な「純愛」へのアプローチが愉しめる一冊だと思います。値段もお手頃では?*1日本文学にみる純愛百選 zero degree of 110 …

あるくかい日記予告

あるくかいという会合を学生時代から始めてかれこれ8年。漫然と街々をあるく。活動といえばたったそれだけ。町をぶらぶらすることが何よりも好きな自分は、講義をサボっては独りでせっせと歩いていた。あるくにも理由がある。名所旧跡寺社めぐり、食いある…

都市を使用する権利

東浩紀・北田暁大著『東京から考えるー格差・郊外・ナショナリズム』(NHKブックス、本体価格1160円+税、ISBN978-4-14-091074-0)はポスト・バブル世代(1971年生れ)の二人の論者(この二人がともに東京「郊外」の出身者であり、<郊外から考える>東京論…

フェール・ル・ポン(橋渡し、あるいは先延ばし)?

東京大学駒場キャンパスで開催された、LACというシンポジウム(第6回を数えるらしい)を覗いた。議題は「新しい小説〈ヌーヴォーロマン〉から小説の未来へ」である。司会進行は野崎歓氏、そしてやはりジャン=フィリップ・トゥーサンの参加、そしてジャン・…

引っ越し、たい。

世田谷に住んではや8年になる、そろそろ居場所を移したいという気持にもなった。世田谷は交通の便はよいが、本屋さんが貧しく、三軒茶屋はTUTAYAしかなく、桜新町は中央図書館しかない。世田谷区なら下高井戸(赤堤)がよい。町に武蔵小山のような商店街か下…

鉄の道に鉄の女。私は「私」鉄である。

酒井順子の単行本『女子と鉄道』(光文社、本体価格1300円+税、ASIN: 4334975097)が出た。素敵な装丁でつい、買ってしまう。鉄の道は女にもあるというのは寡聞にして聞かないが、ゆる〜い鉄道好きというのが鉄の女の生きる道(?)なのだそうだ。その意味…

はてな・デビュタン

ブログの記法がよくわからないけれど、『ユリイカ 特集*ブログ作法』(2005.4、青土社、ISBN4-7917-0132-1、本体価格1300円+税)を今頃手にし談義を読んでいたら、何だか<はてな>がやりたくなったので、登録してみました。これからいろんな本や街(街歩…

古き良き仏語参考書

今月、白水社から伊吹武彦編『フランス語解釈法』(本体価格3400円+税、ISBN4-560-00337-8)が復刊された。これは1957年に刊行された《フランス語学文庫 Le francais vivant》というコレクションの一冊「解釈法」(12巻目)をリニューアルしたものである。…

ざっと見新刊

僕はだいたい、本屋さんの店頭か、本屋さんで配っている出版社のPR紙に目を配り、新刊関係で気になったものを購入したりしている。会社のある早稲田近辺では、あゆみブックス早稲田店さんのおかげで、新刊の目配りが出来る。気になったものだけ挙げる。 季刊…

『純愛百選』(仮題)制作進行中

日本の近現代の文学作品から、「純愛」を鍵語に集めた作品のアンソロジー的な*1本『純愛百選』*2を今年中の刊行(早くて11月中)に向け、歩を進めている。編者はご存知、芳川泰久先生。著者は芳川先生をはじめとした数名が執筆担当するため、内容形式ともに…

文芸誌雑感

積ん読ばかりでまともに読めない鬱々とした日々が続くも、書店やウラゲツ☆ブログなどで、新刊チェックだけはどうにもやめられない。月刊の文芸誌も毎月一冊くらいは購入して目を通すことにしている。とはいえ、掲載された全作品を読み通すことはこれまた、か…